自動運搬ロボット(AMR・AGV)を安全に運用するために必要なISO3691-4とは | 搬送ロボットガイド
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自動運搬ロボット(AMR・AGV)を安全に運用するために必要なISO3691-4とは
公開:2023.10.02 更新:2024.11.28
「ISO3691-4」という国際規格は、自動運搬ロボット(AMR・AGV)の安全運用に不可欠で、無人搬送車の安全性を確保し、製造業者とオペレーターに明確な手順を提供するガイドラインです。
また、AMRの導入にはリスクアセスメントが必要で、機器制限、危険源特定、リスク評価が含まれます。これらを実施することで、無人搬送車の安全性と効率性が向上します。
この記事ではISO3691-4について解説し、必要な安全項目やリスクアセスメントについて紹介していきます。
目次
自動化車両技術の進化とISO3691-4規格の重要性
ISO3691-4規格は、無人搬送車(AGV、AMR)の安全運用に必要なガイドラインを提供し、情報が限られていても効果的な安全策を策定できます。適切な遵守により、安全性と効率性を向上させることが可能です。
◇ISO3691-4規格と無人搬送車の安全運用
自動ガイドビークル(AGV)や自動移動ロボット(AMR)などの無人搬送車を安全に運用するためには、国際規格「ISO3691-4」が不可欠です。この規格は、無人搬送車とその運用システムにおける安全対策を詳細に規定しており、世界中のエキスパートによって協力して策定されました。規格は、限られた情報の中でも効果的な安全策を導入できるため、無人搬送車やAMRの運用をスピーディかつ安全に進めるための重要なガイドラインを提供します。
◇ISO3691-4規格の重要性と今後の自動化車両技術への影響
ISO3691-4は、無人搬送車システムの安全性を確保するために、製造業者とオペレーターに明確な手順を提供します。この規格は、自動化車両分野の急速な進化に対応するため、2020年に発行されました。また、欧州ではISO規格を補完する形で、無人搬送車システムに関する電気的側面を取り扱ったEN 1175:2020も存在します。ISO3691-4を適切に遵守することで、安全性と効率性を最大限に引き出し、工場や倉庫の運用に大きな利点をもたらすことができます。
無人運搬車の安全性向上に不可欠なISO規格とPLの重要性
ISO-3691-4とJIS D 6802は、無人運搬車の安全運用に必要な規格で、ブレーキシステムや速度制御、人検出、非常停止機能に関する安全基準を定義しています。PL基準に従い、安全性向上を図ります。
◇無人運搬車の安全規格とISO-3691-4の役割
近年、自動運搬ロボット(AGV)や自動移動ロボット(AMR)などの無人搬送車の利用が急増しています。これらの自動化車両は、物流や製造現場における効率化を実現するために不可欠な存在となり、その運用が拡大する中で、安全性に関する規格も大きな変化を遂げています。特に注目すべきなのは、2020年に発行された国際安全規格「ISO-3691-4」です。この規格は、無人運搬車とその運用システムにおける安全対策を定義し、世界的に安全基準を統一するための重要な役割を果たしています。
「ISO-3691-4」は、無人運搬車の設計、製造、運用に関わるすべての関係者に対して、適切な安全対策を実施するためのガイドラインを提供します。この規格は、車両の移動や人との接触によるリスクを最小限に抑えるための手段を明示し、運用時の安全性を確保するために不可欠です。さらに、規格に基づく安全性能の定義は、ISO13849-1によりパフォーマンスレベル(PL)として分類され、これにより無人運搬車の安全性を数値で明確に示すことが可能になります。
PLは、aからeの5つの段階で示され、各段階が事故による危険性に対する安全性能を表現しています。例えば、重大な危険が高い状況では、PLはdまたはeに設定されることが一般的です。これにより、製造業者やオペレーターは、リスクを評価し、適切な安全策を講じることができます。このように、ISO-3691-4は無人運搬車の安全運用に不可欠な規格であり、これを遵守することが、現場の安全性を高めるための第一歩となります。
◇JIS D 6802に基づく安全要求事項とPL基準
ISO-3691-4の発行に伴い、日本国内でも関連する規格である「JIS D 6802」が2022年に改定されました。この改定により、無人運搬車に求められる安全基準がさらに厳格化され、特にブレーキシステムや速度制御、人検出システム、非常停止機能といった重要な安全要求事項が明記されています。
まず、ブレーキシステムに関しては、「JIS D 6802」によれば、無人運搬車には常に作動するブレーキシステムが求められます。もし速度制御や操舵制御が正常に機能しない場合には、自動的にブレーキが作動し、車両を安全に停止させることが必要です。これに関しては、安全性が非常に高いとされるPLd以上の安全性能が求められます。これにより、無人運搬車が万が一の故障や異常時でも、運転者や周囲の人々に危険を及ぼすことなく安全に停止することができます。
次に、速度制御と速度監視に関しては、無人運搬車には速度監視システムを設け、速度を適切に制御する仕組みが必要です。速度超過を防ぐために、具体的な手段については規定がないものの、PLはc以上である必要があります。このため、ハードウェアベースのセーフティエンコーダや速度センサーが必要とされることが多く、これによって車両の速度が過度に速くなることを防止します。
さらに、人検出システムも無人運搬車には不可欠です。これは、車両が人を検知し、安全な距離を保つために必要な機能です。このシステムのPLはc~d以上である必要があり、設計者は安全性を確保するために適切な手段を選択する必要があります。具体的な技術は明記されていないため、各設計者がPLを考慮し、最適な技術を導入することが求められます。
最後に、非常停止機能についてですが、外部から非常停止信号が送られた場合、無人運搬車は直ちに動力と停止ブレーキを作動させる必要があります。これにより、緊急時に車両が即座に停止し、周囲の安全を確保することができます。非常停止機能のPLはd以上である必要があり、これは無人運搬車の安全性向上に欠かせない要素です。
これらの安全要求とPL基準を適切に満たすことは、無人運搬車の安全運用において非常に重要です。規格の遵守と適切な設計、装置の選定により、無人運搬車は安全かつ効率的に運用され、リスクを最小限に抑えながら業務を遂行することが可能となります。
自動運搬ロボット(AMR・AGV)の安全対策としてリスクアセスメントが重要なわけ
AMRの安全性確保は、JIS D6802「無人搬送車システムー安全規則」への準拠が不可欠です。そのため、AMRを導入する際にはリスクアセスメントが重要な役割を果たします。
機器類の制限の決定
AMRを導入する際には、AMRだけでなく周辺機器についても考慮する必要があります。各機器の使用範囲、設置環境、稼働時間などの仕様を検討し、決定する必要があります。これにはAMR1台ごとの稼働範囲や走行速度なども含まれます。
危険源の特定
次に、AMR導入時にどのような危険があるかを考えます。AMRの走行中における危険源とその発生状況を想定し、可能なリスクを特定します。積載物の落下や衝突など、あらゆる角度から検証が必要です。
リスク見積もり
危険源が特定されたら、それぞれのリスクについて見積もりを行います。リスク見積もりは、リスクの重篤度、発生可能性、危険性の頻度に基づいて評価されます。これにより、客観的なリスク評価が可能となります。
リスク評価
最終的に、リスク見積もりの結果をもとに、AMR導入時のリスクを評価します。
AMRの導入においては、リスク評価が高い場合、安全対策を講じなければなりません。事前の対策が後で問題を引き起こす可能性もあるため、安全性を確保するためのリスクアセスメントは非常に重要です。
国際規格「ISO3691-4」は、AGVやAMRなどの無人搬送車の安全運用に必要な規格です。この規格は、無人搬送車とその運用システムにおける安全対策の包括的なガイドラインを提供し、迅速な安全策の策定を可能にします。
また、リスクアセスメントを行うことも重要で、機器の制限、危険源の特定、リスク評価などのステップを追うことで、AMRの導入時に安全性を確保できます。この規格とリスクアセスメントを遵守することで、無人搬送車の安全性と効率性を最大化できます。
