AMR自律走行搬送ロボットで物流業界の2024年問題を解決 | 搬送ロボットガイド
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AMR自律走行搬送ロボットで物流業界の2024年問題を解決
公開:2023.12.22 更新:2024.10.07
2024年問題は物流業界に大きな打撃を与える可能性があり、この問題に対処するためにAMRの活用が注目されています。AMRは、労働力不足や時間の浪費を解消し、物流業界に新たな効率性をもたらします。一方で、AMRの導入には従業員の理解やコスト、運用ルールの整備などの課題点もあります。
目次
物流業界に大打撃を与える2024年問題
2024年問題とは、働き方改革により物流ドライバーの労働時間の上限規制が課されることで生じる問題のことです。この問題により、物流業界全体の売り上げ減少やトラックドライバーの収入減少を引き起こす可能性が示唆されています。
◇2024年問題で物流業界もドライバーも苦しむ
2024年問題とは、働き方改革により2024年に物流ドライバーの労働時間の上限規制が課されることで生じる問題のことです。具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、一人当たりの走行距離が短くなります。
既に働き方改革の関連法に伴って一般的に時間外労働は原則月45時間、年間360時間と規定され、多くの企業で施行されています。
しかし、物流・運送業界は業務の特性上、別の扱いとなり、上限制限も960時間で、かつ2024年3月末まで施行猶予があります。それでも、2024年4月に施行された際には、業界全体の売り上げ減少やトラックドライバーの収入減少を引き起こす可能性が示唆されています。
労働時間の制限は、ドライバーの健康や安全を守るためには有用ですが、それによって物流業界に大きな影響が及ぶことが予想されます。
◇2024年問題が引き起こす物流の停滞
労働時間の上限導入により、物流の停滞が懸念されています。配送スケジュールの遅れや効率の低下が予想され、モノが運べなくなる可能性があります。これは、消費者にとっても大きな問題です。
ではなぜ、労働時間の上限が課されると問題が起きるのでしょうか。実際に法案に従ってシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションでは1カ月の拘束時間を計算します。式は、1カ月の時間外労働時間=時間外労働の年間上限÷12カ月です。これに、数字を当てはめると、
【1カ月の時間外労働時間】960時間÷12カ月=80時間
となります。さらに、以下の労働条件に当てはめます。
・1カ月の労働日数 20日勤務
・1日の法定労働時間 8時間
・1日の休憩時間 1時間
・時間外労働 80時間
そうすると、
【1カ月の法定労働時間】1日8時間×20日=160時間
【1カ月の休憩時間】1時間×22日=22時間
すべて足して、
【1カ月の拘束時間】160時間+22時間+80時間=262時間
となります。そして、出た数字と現状を比べてみます。
厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」によると、1カ月の拘束時間が275時間以下であるドライバーは令和3年度だけで66.3%となっています。したがって、法定に従って262時間以内の労働を目安にした場合、時間を超過するドライバーが多くいるため、これまでの働き方では輸送が困難になることが予想されます。
物流業界でAMR自律走行搬送ロボットが活躍する場面
トラック運転手の拘束時間の2割は、倉庫での荷待ちや荷下ろしの時間です。AMRの導入により、これらの作業を自動化することで、拘束時間を削減できます。
◇トラック運転手の拘束時間の2割削減
トラック運転手の拘束時間の2割は、倉庫での荷待ちや荷下ろしの時間といわれています。荷待ちや荷下ろしとは、運ぶ予定の荷物を倉庫から出てくるまで待つことや、運んできた荷物を下して倉庫内へ移動することを言います。
物流業界では、この待ち時間の削減をすることが物流の停滞を回避するために必要不可欠となり、倉庫で活躍するAMR自立走行搬送ロボットが注目を浴びています。
◇庫内作業を効率化
AMRとは自立走行型の搬送ロボットのことを言います。このロボットは、千葉県にあるAmazon倉庫に約2600台導入され、活躍しています。
このAMRは、3万台以上ある商品棚の中から、注文を受けた商品が入った棚を持ち上げ、商品を取り出す担当の従業員のもとに自動で運びます。これにより、従業員が棚まで歩くことなく商品の棚入れや棚出しができ、時間短縮につながります。
こうして、手作業による時間の浪費やヒューマンエラーを削減し、よりスムーズで効率的な作業ができることによってトラック運転手の待ち時間も減らすことができます。
物流のAMR自律走行搬送ロボットを導入するにあたっての課題
AMR導入の課題は、従業員のリテラシー不足、導入費や維持費の発生、運用ルールやマニュアルの作成の3つです。従業員への教育や導入コストの見極め、運用ルールの整備など、導入前に十分な準備が必要です。
◇従業員のリテラシー不足の懸念
AMRを導入する上での課題の一つ目は、従業員のリテラシー不足です。
例え従業員や企業にとって利点の多いAMRを導入したとしても、従業員の理解が得られなければ業務に生かすことはできないでしょう。また、作業員によっては、こういったロボットに抵抗を感じる場合もあるため、導入目的や新しい業務フローを懇切丁寧に教える必要があります。
さらに導入の利点も同時に説明し、AMRとの共存への理解を深めることが大切です。
◇導入費や維持費の発生
課題の二つ目は、導入費や維持費の発生です。
AMRは利点が多い一方、導入コスト、ランニングコスト、メンテナンス費用がかかります。導入前に実際にかかるコストを計算し、どこまで作業を自動化させるかなど、かかるコストと自社への利点を総合的に判断する必要があります。
◇運用ルールやマニュアル作成が必要
三つ目の課題は、運用ルールやマニュアルが必要になることです。
従業員がAMRを効果的に活用するためには、運用ルールやマニュアルの作成が不可欠です。これにより、混乱を避け、スムーズな運用を実現できます。
作業範囲や運用時のルール、マニュアルをきちんと導入前に作成して、作業員に熟知させることが大切です。これらが十分に構築されていなければ、現場に混乱をきたすことになります。
また、万が一トラブルが起きた際も、ルールやマニュアルがあれば、迅速に対応ができます。これらの作成作業は大変骨が折れる業務ですが、AMRの導入で生み出せる効果は莫大です。
2024年問題は、物流業界に大きな打撃を与える可能性がある重要なテーマです。この問題は、働き方改革に伴い、物流ドライバーの労働時間の上限規制が2024年に導入されることから生じます。具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、一人当たりの走行距離が短縮されることが予想されています。
この規制の導入により、物流業界全体の売り上げ減少やトラックドライバーの収入減少が懸念されています。物流業界は、時間外労働が多く発生する特殊な性質を持っており、これらの制約に対処する必要があります。
一方で、この問題に対処するためには、AMR(自律走行型ロボット)の活用が注目されています。特に倉庫での荷待ちや荷下ろしの時間を自動化し、トラック運転手の拘束時間を削減することが期待されています。AMRは、労働力不足や時間の浪費を解消し、物流業界に新たな効率性をもたらす可能性があります。
しかし、AMRを導入するにあたってはいくつかの課題も存在します。まず、従業員のリテラシー不足が懸念されます。新しい技術の導入には従業員の理解と協力が不可欠であり、教育と情報共有が必要です。また、AMR導入には導入費用や維持費用がかかります。これらのコストを計算し、投資対効果を検討することが必要です。さらに、運用ルールやマニュアルの整備も不可欠であり、混乱を避けるためにもしっかりと準備する必要があります。
2024年問題は物流業界に大きな影響を及ぼす可能性がありますが、AMRの導入を通じてこれらの課題に対処し、効率的な物流を実現する道が開かれつつあります。物流業界は今後、新たな技術を積極的に取り入れ、変革を遂げることが求められます。
