多関節ロボットとは?ロボットアーム付きAMRの導入で工場の更なる自動化を目指す | 搬送ロボットガイド
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多関節ロボットとは?ロボットアーム付きAMRの導入で工場の更なる自動化を目指す
公開:2024.04.25 更新:2024.11.28
多関節ロボットは多くの関節を持ち、高い柔軟性と精度を備え、様々な作業に活用されます。垂直多関節ロボットは溶接や搬送に使用され、水平多関節ロボット(SCARA)は組み立て作業に適しています。ロボットアーム搭載AMRは、自律的に移動し、新しい作業や環境に適応できます。
目次
未来の製造を支える多関節ロボット
多関節ロボットは多くの関節を持ち、高い柔軟性と精度を備え、様々な作業に活用されます。2つのタイプに分かれており、垂直多関節ロボットは人の腕に似ており、溶接や搬送などに使用されます。一方、水平多関節ロボット(SCARA)は上下方向の剛性が高く、精密な組み立て作業に適しています。
◇多関節ロボットとは
多関節ロボットは、その名の通り多くの関節を持つロボットで、特にJIS B0134という日本工業規格では、腕に3つ以上の関節を持つものが多関節ロボットとして定義されています。このロボットは、多関節構造を活かして、人間が行っていた複雑で繊細な動きを再現することができます。そのため、製造現場や組み立て作業など、さまざまな分野で活用されています。
多関節ロボットの最大の特徴は、高い柔軟性と精度です。関節の数が多いことで、複雑な動作が可能になり、あらゆる方向に自由に動けるため、多種多様な作業に対応できます。例えば、狭いスペースでの組み立て作業や、高速かつ精密な加工が必要な現場でも、その性能を発揮します。また、高度なセンサー技術と制御システムにより、微細な動作も正確に実行できるため、非常に高い作業精度を求められる場面でも信頼される存在です。
さらに、こうした特性により、多関節ロボットは自動車や電子機器の製造業、食品産業、医療分野など、幅広い業界で利用されています。例えば、自動車製造ラインでは、部品の溶接や塗装作業を自動化することで生産効率を向上させています。一方で、医療分野では、手術支援ロボットとして細かい手術操作をサポートする役割も果たしています。このように、多関節ロボットは柔軟性と精密さを兼ね備えた技術革新の象徴ともいえる存在です。
◇多関節ロボットの種類
多関節ロボットは、大きく2つのタイプに分類されます。それぞれのタイプには独自の特徴があり、用途や作業内容に応じて使い分けられています。
・垂直多関節ロボット
このタイプは、ロボットのアームが垂直方向に動く構造を持つものです。一般的に「多関節ロボット」と言われると、この垂直多関節型を指すことが多いです。特徴的なのは、その形状が人間の腕に似ているため、非常に高い自由度を持つ点です。この自由度によって、さまざまな動きを実現できるため、多様な作業に対応できます。
具体的な用途としては、溶接作業や部品の搬送が挙げられます。これらは人間にとって負担が大きいだけでなく、危険を伴う場合も多いため、垂直多関節ロボットがその代替役を担うことで、安全性を向上させるだけでなく、生産効率も高めることが可能です。
一方で、課題も存在します。例えば、アームの剛性が高くないことや、制御に高度な技術を要することから、特に高速での作業が求められる場面では性能が制限される場合があります。それでも、その汎用性の高さから、多くの産業で欠かせない存在となっています。
・水平多関節ロボット(SCARAロボット)
もう一方のタイプである水平多関節ロボットは、アームが水平方向に動く設計となっています。英語では「Selective Compliance Assembly Robot Arm」と呼ばれ、その頭文字を取って「SCARA(スカラ)」ロボットとして知られています。このタイプは、垂直多関節ロボットとは異なる特徴を持っています。
まず、SCARAロボットは上下方向への剛性が高いことが挙げられます。これは、例えば部品を押し込むような作業や、精密な組み立て作業において非常に有利に働きます。特に、高い精度が求められる作業現場では、SCARAロボットの特性が活かされます。
また、水平動作に特化した設計により、比較的シンプルな制御で高い速度と精度を実現できる点も魅力です。このため、電子部品の組み立てや小型製品の製造ラインなどで広く採用されています。
多関節ロボットとAMRのハイブリッド!ロボットアーム搭載AMRの魅力
ロボットアーム搭載AMRは、AMRにロボットアームを組み込んだものです。移動性が高く、自律的に作業できます。新環境への適応が容易で、コスト削減や安全性向上に寄与します。
◇ロボットアーム搭載AMR
ロボットアーム搭載AMRは、上部にロボットアームを取り付けた、次世代型のロボットシステムです。この仕組みにより、AMRは単なる移動装置としてだけではなく、移動先で高度で複雑な作業を実行できる多機能な機器として機能します。
このロボットは、周囲の環境をリアルタイムで認識するセンサーやカメラを備えており、障害物を自動的に検知して安全に回避しながら移動します。移動後は、搭載されたロボットアームを使用して、物の搬送、組み立て、選別、あるいは精密な加工作業といったさまざまなタスクを効率よく遂行します。これにより、人間の作業負担を軽減すると同時に、作業効率を大幅に向上させることが可能です。
従来の生産ラインで一般的に使用されてきたベルトコンベアや固定型ロボットと比べて、このロボットアーム搭載AMRには大きな利点があります。それは、移動性の高さによる柔軟性です。従来の固定型装置は設置場所が決まっており、作業範囲が限られていました。しかし、ロボットアーム搭載AMRは、自由に工場内や作業現場を移動できるため、必要な場所へ迅速に移動して作業を行うことができます。
◇ロボットアーム搭載AMRの魅力
ロボットは自律的に移動する能力を持つため、新しい作業や未知の環境に柔軟に適応することが可能です。この特性により、固定型の設備では実現が難しい迅速な対応力を発揮し、企業の生産性向上に大きく寄与します。たとえば、生産ラインや倉庫のレイアウトが変更される場合でも、ロボットはその場で設定を調整するだけで新しい環境に即座に対応します。そのため、従来必要だった大掛かりな設備の再配置や設置作業が不要になり、時間とコストを大幅に削減することが可能です。
さらに、ロボットの柔軟性は、単に配置変更を容易にするだけでなく、運用面での安全性向上にも寄与します。人間が作業する際に危険が伴う場所や、高温や化学物質のある環境などでもロボットを活用することで、作業者をリスクから守ることができます。これにより、作業現場の安全性を確保しながら、生産性を落とすことなく業務を進めることが可能になります。
このような特性は、特に製造業や倉庫管理の現場において重要な役割を果たします。これらの業界では、顧客の需要や市場の変化に応じて迅速な対応が求められるため、設備の柔軟性が欠かせません。たとえば、季節ごとに取り扱う商品の種類が変わる物流センターや、多品種少量生産を行う製造現場では、ロボットの自律移動能力が効率的な運営を可能にします。
また、ロボットの導入によるコスト削減効果も大きなメリットです。従来の固定設備では、設置やメンテナンスに高い費用がかかる上、環境の変化に対応する際には追加の投資が必要でした。一方、自律移動型のロボットは、その汎用性の高さから長期的なコストパフォーマンスに優れており、設備の総合的な運用コストを削減する効果があります。
このように、自律移動型ロボットは、変化の激しい現代の製造業や物流業界において欠かせない存在となりつつあります。その導入によって、柔軟性と効率性を兼ね備えた作業環境を実現し、企業の競争力向上に貢献する技術として、ますます注目を集めています。
精度と安全性を両立するロボットアーム搭載AMR
ロボットアーム搭載AMRを導入する際は、人間との協働作業空間の安全性が重視されます。センサーや被害を最小限にする仕組みが必要です。国際規格があるものの、具体的な規格はまだ存在しないため、企業は独自に安全対策を講じる必要があります。停止精度や作業精度も重要で、特に細かな作業には正確な位置補正が求められます。
◇安全に考慮した使用
ロボットアーム搭載AMRを導入する際には、人間と同じ作業空間で安全に稼働させることが大きな課題となります。このタイプのロボットは従来のような安全柵に囲まれたエリア内で稼働するわけではなく、自由に移動するため、衝突事故を防ぐための十分な安全対策が求められます。
具体的には、周囲の人や物体を感知するセンサーやカメラを活用し、ロボットが人間や障害物を検知した際に即座に停止する仕組みが必要です。また、万が一衝突が発生しても、衝撃を吸収して被害を最小限に抑える設計や、速度制限を設けることも重要なポイントとなります。
国際的な安全規格の中には、移動型ロボット(AMR)や協働ロボットの基本的な安全性に関するガイドラインは存在していますが、ロボットアームを搭載したAMRに特化した具体的な基準はまだ整備されていません。このため、導入を検討する企業は、独自にリスクを評価し、安全対策を計画・実施する必要があります。
さらに、導入時に注意が必要な点として、ロボットの可搬重量に関する問題があります。ある企業では、20kgの荷物を扱うために、可搬重量20kgのロボットアーム搭載AMRを採用しました。しかし実際の運用では、荷物の重量に加え、ロボットアーム自体の重さや動作時の慣性が加わったことで負荷が想定を超え、故障が発生したケースが報告されています。
このようなトラブルを防ぐためには、荷物の重量だけでなく、ロボットアームの動作に伴う物理的な影響を考慮し、必要な性能に余裕を持たせた仕様を選定することが求められます。ロボットアーム搭載AMRの効果的かつ安全な運用には、事前の綿密な計画とリスク評価が欠かせません。
◇停止精度や多関節ロボットの精度の確認
ロボットアーム搭載AMRでは、AMRが目的地に到達した後の本体の停止精度を確認する必要があります。そして、ロボットアームが作業を行う場合は、その作業の精度も考慮する必要があります。
特に、ロボットアームが行う作業が細かな精度を要求する場合は、正確な位置での停止が重要です。そのため、位置補正機能付きのカメラを追加するなどの対策が必要になるでしょう。
ロボットアーム付きAMRの導入で自動化が進んだ事例を紹介
リバプール大学では、科学研究において多くの実験を行うため、自由に移動できるロボットアーム付きAMRを開発しました。また、工場内では、材料供給工程の自動化にも活用され、材料不足を検知すると自律的に補充します。
◇リバプール大学の事例
リバプール大学では、科学研究において数多くの実験を繰り返すことが必要です。そこで、研究室や実験場を自由に移動できるロボットアーム付きAMRを開発し、わずか8日間で688の実験を行い、結果を記録できました。
このロボットは1日わずか90分の充電で済むため、充電時間を実験時間に回すことで、従来の1000倍速いスピードで結果を得られました。
◇材料供給工程を自動化した事例
工場内の材料供給工程でも、ロボットアーム付きAMRが活躍します。このロボットは自律的に行動でき、材料が不足していることを検知すると、供給が必要な場所に移動し、材料を補充します。
また、高荷重容量を持つ直交ロボットを組み合わせることで、大量や大型の部品を効率的に搬送できます。
多関節ロボットは、その多くの関節によって高い柔軟性と精度を提供し、さまざまな産業で幅広く活用されています。
垂直多関節ロボットは、その形状が人の腕に似ており、溶接や搬送などの作業に利用され、アームの自由度が高いため、人間にとって危険や負担が大きい作業を代行します。一方、水平多関節ロボット(SCARA)は、アームの上下方向の剛性が高く、押し込み動作などの精密な組み立て作業に適しています。
さらに、ロボットアーム搭載AMRは、AMR(自律移動ロボット)にロボットアームを組み込んだものであり、移動性が高く、自律的に様々な作業を行うことができます。これにより、新しい作業や環境に容易に適応でき、生産ラインの再構築や配置変更が容易になります。ただし、安全性や作業精度の確保が課題となります。
リバプール大学では、自由に移動できるロボットアーム付きAMRを開発し、研究室や実験場で多くの実験を行いました。このロボットは充電時間を実験時間に充てることで、従来の1000倍速いスピードで結果を得られました。同様に、工場内では材料供給工程を自動化し、材料不足を検知して補充する機能を持ったAMRが活躍しています。
