AMRと5Gの連携で実現する未来のスマートファクトリー | 搬送ロボットガイド
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AMRと5Gの連携で実現する未来のスマートファクトリー
公開:2024.04.30 更新:2024.10.07
AMR(自律移動ロボット)と5Gの統合は、未来の製造業に革命をもたらします。ローカル5Gの低遅延通信とAMRの自律性を組み合わせることで、スマートファクトリーでは効率的な自動化が可能となり、生産プロセスが革新されます。この組み合わせにより、生産性の向上や人手不足の解消、さらなる効率化が実現される見通しです。
目次
スマホだけではない5Gの応用範囲とは?
低遅延と高速通信を売りにしているのは、次世代通信規格の5G(第5世代移動通信システムの略)です。現在はその特徴を活かし、携帯電話やスマートフォンの通信に使われていることで有名ですが、モバイル端末以外での利用も期待されています。
◇5Gとは
5Gとは、第5世代移動通信システム(5th Generation)の略で、4G(LTE)の次に登場した通信技術です。主に以下の3つの特徴を持っています。
高速、大容量通信
4Gまでの通信速度に比べて、理論値で10倍以上速い10Gbpsです。通信速度の向上により、4Kや8Kといった大容量の映像転送にも問題が生じづらくなります。
低遅延
通信における遅延は1msであり、4Gに比べて10分の1の遅延速度になっています。通信の遅延が大幅に軽減され、ストレスなくオンラインゲームやリアルタイムの遠隔操作が可能になります。これにより、タイムラグの少ない快適な通信環境が提供されます。
多台数の同時接続
多数同時接続も5Gの特徴です。同時接続台数は100万台であり、4Gに比べて10倍の台数です。複数の機器を同時にネットワークに接続できるため、スマートフォンやタブレットだけでなく、家や街中のさまざまな製品や機器とも通信が可能です。
これにより、IoTの活用が進み、より便利な生活が実現されます。スマホなどのモバイル端末はもちろんのこと、ロボットやセンサーなどあらゆるデバイスをひとつのネットワークに繋げ、管理できるようになります。
◇5Gの背景
第5世代移動通信システムという名前から分かる通り、5Gは5世代目であり、1Gから4Gまでの開発されてきた歴史があります。
1Gは音声通信のみができるものとして、肩掛け携帯電話や移動通信端末普及の足がかりとなり、2Gで携帯電話のインターネットアクセスが可能になったことから、携帯電話サービスも普及するようになりました。
3Gでは、携帯電話のインターネットへの通信と通信速度の向上により、契約者数も増え、3.9世代(LTE)といった開発も進んでいます。4Gになると、更なる高速化により、スマホなどのモバイル端末で大容量通信をするのは当たり前になってきました。
しかし、利用者側の大容量通信を必要とする機会が増えたため、通信速度の不満を抱えることになります。これらの歴史を経て、不満を解決するような5Gが規定され、高速・大容量通信、低遅延、多数同時接続を叶えて、現在も普及しています。
◇5Gとビジネス
もともとは移動通信用通信システムとして開発された5Gですが、使い道はモバイル端末だけではありません。高速・大容量通信、低遅延、多数同時接続を叶えられる5Gという規格は、工場のIoT化に向けて非常に相性のよい技術といえます。
また、それだけでなく、工事現場での重機の遠隔操作、農場の管理、医師による遠隔診療など、さまざまな産業での役割が期待されています。
5Gの導入でスマート物流を実現するには?

画像出典先:PR TIMES
5G技術による「超低遅延」の特性で、物流業界において革命的な変化をもたらすと予想されています。例えば、ロボットの動作がよりスムーズになることや、トラックを遠隔で動かすことなども期待されています。
5Gの導入で得られる高速通信と超低遅延の特徴を活かし、ビッグデータを収集、サプライチェーンの各要素が有機的に連携することが可能になるのです。
◇5Gの超低遅延技術
5Gの超低遅延技術は、データの送受信における遅延時間を1ミリ秒以下まで削減することができます。これにより、ほぼリアルタイムでのデータ交換が可能となり、遠隔地からの精密なロボット操作や瞬時の意思決定が実現します。
より将来的な観点では、自動運転やドローンを用いた配送システムでは、この超低遅延が交通制御や障害物の情報を得たとたんに反応することを可能にし、より効率的で安全な運行が可能です。
◇スマート物流の実現
5Gの導入により、物流業界は「スマート物流」という新たな段階に入りました。スマート物流では、高速かつ超低遅延の通信によって、倉庫内のロボットや自動ピッキングシステム、在庫管理システムがシームレスに連携できます。
これにより、オーダー処理から配送までの時間を大幅に短縮し、コスト削減と顧客満足度の向上を実現します。また、収集したデータとAIを組み合わせることで、データ分析と予測精度が向上し、需要予測や在庫最適化がより精密に行えるようになります。
さらに、センサー技術との統合では、輸送中の商品の状態をリアルタイムでモニタリングし、品質保持や問題発生時の迅速な対応が可能です。あらゆるものを繋げ、利便性を高めることで更なる効率化を目指せます。
5Gで生産の柔軟性を向上するAkatsuki

画像出典先:PR TIMES
5Gの低遅延、高速大容量通信の特徴を活かし、5Gをローカル環境に用意することで生産現場の効率を向上するAkatsukiが登場しました。
◇ローカル5Gの可能性
Akatsukiとは、ローカル5Gに対応したAMR(Autonomous Mobile Robot)です。ローカル5Gは、従来の通信技術に比べて低遅延かつ大容量の通信を実現する次世代のネットワークです。これにより、工場や倉庫などのローカル環境で、自動搬送走行ロボット(AMR)などのスマートデバイスを効率的に制御することが可能になります。
従来のWi-Fiでは電波干渉や通信の不安定性が課題でしたが、ローカル5Gを導入することで、大量のデータを低遅延で送受信し、複数のAMRを同時に安定して制御できるようになります。さらに、群制御モジュールを活用することで、各AMRのタスクと経路を最適化し、効率的な作業を実現できます。
このように、ローカル5GとAMRの組み合わせは、製造業や物流業界においてスマート化を促進し、生産性を向上させる可能性があります。AMR同士や他のスマートデバイスとの連携も容易になるため、未来のスマート化を効果的に推進することができます。
◇大量安定通信の要となる5G
製造業における生産スタイルの変化や顧客ニーズの多様化に伴い、工場の生産プロセスは従来の「少品種大量生産」から「変種変量生産」へとシフトしています。この変化により、工場では生産工程の変更が頻繁に必要となり、作業員に求められるスキルや経験の幅も広がりました。そのため、品質の維持や作業員のサポートが求められています。
しかし、従来の工場設備では、ネットワーク機器を繋ぐための多量のケーブル配線が必要であり、工程の変更ごとに配線変更や新たな配管の設置が必要となります。これは現場に大きな負担をかけるだけでなく、効率的な生産を妨げる要因となっています。また、物流業界では人手不足が深刻化し、生産性の向上が急務となっています。
このような課題に対処するためには、工場の設備を無線化することが必要です。しかし、広域な範囲をカバーし、安定した通信を実現するためには、従来の無線規格では限界があります。ここで、ローカル5Gが注目される理由です。ローカル5Gを導入することで、工場内の通信インフラを大幅に簡素化し、生産性の向上やスマート化を実現することが可能となります。
5G導入で生産の可視化と生産性向上
5Gの導入により、AkatsukiをはじめとしたAMRの導入や5Gの高速・大容量通信によって得られたビッグデータの解析で、生産性向上が見込めます。生産性の向上や作業・設備の最適化が行なえ、人手不足の解消にもつながります。
◇生産の可視化
5Gの導入により、生産ラインや作業者、設備、材料の状況を即座に送信、反映することで可視化できます。また、センサーやネットワークカメラ、生産管理システムを活用し、作業に関わる情報をデータ化し、集約・分析することもできます。
◇人手不足の解消
AkatsukiのようなAMRの導入により、作業者の移動量を極限まで減らし、作業者の負担を減らすことが可能です。その結果、従来必要としていた人員が不要となるため、人手不足の解消につながります。
◇作業や設備の最適化
5GやAMRの導入で、工程の最適化や材料管理の自動化が実現可能です。例えば、作業データを基にしたAIやIoTのサポートにより、従来は見えにくかった作業の改善点を明らかにし、生産性の向上や事故リスクの軽減などが期待できます。
5Gは、高速・大容量通信、低遅延、多数同時接続を実現する次世代通信技術であり、モバイル端末だけでなく、工場や物流業界など様々な領域での活用が期待されています。従来の製造業では、工場設備の配線問題や作業員の多様化による生産性向上の必要性が課題となっていました。そこで、ローカル5Gの導入により、工場内の通信インフラを簡素化し、生産性を向上させる取り組みが注目されています。
AMRやIoTデバイスをローカル5Gに接続することで、工場内の生産ラインや作業者の動向をリアルタイムでモニタリングし、生産プロセスの可視化が実現されます。これにより、作業者の移動量を最小限に抑えることが可能となり、人手不足の解消や作業の効率化が図られます。
また、AIやIoTの活用により、作業や設備の最適化が行われ、生産性の向上や事故リスクの軽減が期待されます。 さらに、ローカル5Gによる超低遅延技術は、工場内のロボット操作や遠隔監視などのリアルタイム通信において大きなメリットをもたらします。
これにより、自動運転やドローンを用いた配送システムなど、より効率的で安全な生産方法の実現が可能となります。これらの取り組みによって、製造業や物流業界におけるスマート化が促進され、生産性の向上や競争力の強化が期待されます。
